大東文化大学 経営学部  経営学演習(担当  梅沢 豊)
2001年度  第10回 6月18日
「規模・範囲の経済性」

1.固定費、変動費
 ・固定費: 研究・開発償却費、機械設備償却費、工場建屋償却費、事務社屋償却費、一般管理費
   等々
 ・変動費: 原材料費、労務費、販売費 等々

2.総費用、平均費用 
   総費用 C = F + V * q
   平均費用 c = 総費用/産出量 = C / c = F / q + V
      C: 総費用,  c: 平均費用,  F: 固定費,  V: 単位あたりの変動費, q: 産出量

3.短期平均費用曲線、長期平均費用曲線
 ・長期の場合に関連してくるファクター: 設備の規模・容量、技術進歩、経験・ノウハウの蓄積

4.規模の経済性(economies of scale) : 産出量の増大に伴って、平均費用が減少すること。

5.範囲の経済性(economies of scope) 
 企業が複数の事業活動をおこなうことにより、それぞれの事業を独立におこなっている時よりも、
より経済的な事業運営が可能になること。複数の事業間で販売チャネル、技術、ブランド、生産設備
などの経営資源を共有することにより、単独でその事業をおこなうよりも、より経済的に事業をおこ
なえることが多い。

6.シナジー(synergy 相乗効果): 「企業の資源から、その部分的なものの総和よりも大きな結
合利益を生み出すことのできる効果」(Ansoff[1967])。
 販売シナジー(共通の販売チャネルやロジスティクス(配送システム)から生じる。)、生産シナ
ジー(設備や従業員の活用、間接費の分散から生じる。)、投資シナジー(工場・機械の共同利用や
研究開発の残存効果から生じる。)、マネジメント・シナジー(経営者のマネジメント経験から生じ
る。)の四つが主体。

7.経営多角化: 複数の事業/製品を手がけること
 ・多角化の事例: 果物屋とフルーツパーラー(千疋屋フルーツパーラー)、電鉄会社と地域開発
 (東武デパート、東武不動産、東武トラベル、東武動物公園)、石鹸会社とフロッピィ―・ディス
 ク(花王のフロッピィ―・ディスク)、航空会社とサービス業(全日空ホテル、JALパック、J
 ALアカデミー)、家電・自動車メーカーと住宅産業(パナホーム・トヨタホーム)、ス―パーと
 銀行業(アイワイバンク;イトーヨーカ堂銀行)、エレクトリニクスメーカーと金融業(ソニー銀
 行、ソニー損害保険、ソニー生命保険)、宅配業者と料金回収代行(ヤマト運輸のコレクトサービ
 ス)・・・。

文献
 土屋守章、「現代経営学入門」新世社、1994.

設問
1.「規模の経済性を追及する時代は終わった」を論評しなさい。
2.最近の企業合併・提携についてあなたの考えるところを述べなさい。
3.経営多角化の身近な事例を三つ挙げて、それぞれにおける範囲の経済性について具体的に説明し 
   なさい。
                                        
                                             以上

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