大東文化大学 経営学部  経営学演習(担当  梅沢 豊)
2001年度  第8回 6月4日
「経営戦略 ―その2―」

T. 最初に、次のテーマでグループディスカッションを行った。

テーマ: 経営戦略の観点から、ハンバーガー業界とコンビニエンス業界とで差(違い)
     があるか。あるとすれば、それはどのような差か。

ディスカッションの模様:経営戦略は、本来、個別企業について定義された概念であるに
もかかわらず、「業界の戦略」があるかのような誤解に基づく議論がなされ、ディスカッ
ションは混乱した。

U.担当教官から以下のレジュメに沿った講義がなされた。

1.経営戦略とは  
 企業(組織・部門)がいかに環境変化に適応していくかを将来志向的に示す構想 ; 戦
い方の指針。

2.経営戦略のいろいろ
・企業戦略(Corporate Strategy):企業全体にかかわる戦略
・事業戦略(Business Strategy):個々の事業分野にかかわる戦略
・ドメイン戦略 : ドメイン(事業領域)設定の戦略
・競争戦略 : 設定されたドメイン上で競合相手といかに競争するかにかかわる戦略
・機能別戦略 : 販売戦略、マーケティング戦略、情報戦略、製品開発戦略等々

3.経営戦略の歴史的変遷:各時代の最重要課題は何であったか

◆第1期 チャンドラー(A. Chandler, Jr.)、アンソフ(H. I. Ansoff)の多角化(=
複数の事業/製品を手がけること)戦略、シナジー(synergy 相乗効果)の追求に主眼を
置く戦略−− 1960年代

企業成長の方向付け、事業・製品ラインの多角化、事業部制、長期経営計画

◆第2期 GE社とBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のPPM(プロダ
クト・ポートフォリオ・マネジメント)等をベースにした、多角的事業経営のための戦略
−− 70年代

市場成長性と自社のマーケット・シェアーのマトリックス上に各SBU(戦略事業単位)
をポジショニングすることによる、多角的事業活動への経営諸資源の配分の合理化

◆第3期 マイケル・ポーターの競争戦略: 各事業分野における競争にかかわる戦略−
− 80年代
  業界の競争構造を規定する五つの脅威・要因(競争業者、買い手、売り手、新規参入
    業者、代替品)
  競争優位をもたらす三つの基本戦略(コスト・リーダーシップ、差別化、絞り込み)
  
◆第4期 RBV(Resource Based View:経営資源に基づく視点):リソース(Resources 
資源)やその組み合わせとしてのケイパビリティ(Capabilities 能力)に基づく戦略、
コアー・コンピタンス(顧客に自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力)に基
づく戦略、プロセス・ベースの戦略、パートナリング(パートナーシップに基づく連携・
提携・統合・合併)戦略−− 90年代

Wal-Mart(大規模小売業), Nucor Steel(製鉄業・ミニミル)、あるいは京阪バレー成
長企業(キーエンス、ローム、村田製作所、三洋化成工業、シマノ、日本電産、任天堂)
などの高いパフォーマンス・効率性・収益性をあげている企業群は、持続的競争優位を築
くためには、企業環境がもたらす機会や脅威を分析するのみでは不十分で、「稀少かつ模
倣にコストのかかるケイパビリティすなわち内部資源を装備し、それを通じて顧客ニーズ
に応える戦略を探る」必要がある、との基本認識に立ち、水平方向には、選択と集中、連
携・提携・統合等による相乗効果・スケールメリットの追求に、垂直方向にはビジネスプ
ロセスの統合に主眼を置いている。

4.内部資源
 内部資源とは、「リソース」, もしくはその組み合わせとしての「ケイパビリティ」
である。ヒト、モノ、カネといった目に見える資源のみならず、目に見えない資源、たと
えば、技術力やブランド、特殊な専門能力や独特の組織文化などを含んでいる。ポーター
が企業の競争力を決定する要因として、産業構造という「外部環境」を重視するのに対し
て、RBVは個別企業レベルの「内部資源」をより重視する。

文献
1.石井淳蔵他「経営戦略論 [ 新版 ]」、有斐閣、1996
2.土屋守章、「現代経営学入門」新世社、1994 第3章
3.DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー『戦略論の進化』 May 2001.

設問
1.マックとモスの戦略を比較検討しなさい。
2.戦略が重視されるようになった時代的背景について述べなさい。
                                        
                                 以上

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