0.企業行動の経済学的分析 利潤最大化をめざす企業の最適(均衡)産出量は、価 格と限界費用が等しくなる水準である。ただし、これは、完全競争企業について成立 する命題であって、少なくとも次の4つの条件が仮定されている。 1)同質の財・サービスを供給している多数の企業が存在する。 2)財・サービス、生産要素について、どの企業も市場で成立している価格に影響を 及ぼすことはない。 3)どの企業も意思決定に必要な全ての情報を所持している。 4)取引に費用は一切かからない。 1.経営戦略とは 企業(組織・部門)がいかに環境変化に適応していくかを将来志 向的に示す構想:組織内の意思決定の指針となるもの。 2.経営戦略のいろいろ ・企業戦略(Corporate Strategy):企業全体にかかわる戦略 ・事業戦略(Business Strategy):個々の事業分野にかかわる戦略 ・ドメイン戦略 : ドメイン(事業領域)設定の戦略 ・競争戦略 : 設定されたドメイン上で競合相手といかに競争するかにかかわる戦略 ・機能別戦略 : 販売戦略、マーケティング戦略、情報戦略、製品開発戦略等々 3.経営戦略の歴史的変遷:各時代の最重要課題は何であったか ◆第1期 チャンドラー(A. Chandler, Jr.)、アンソフ(H. I. Ansoff)の多角化 戦略−− 1960年代 企業成長の方向付け、事業・製品ラインの多角化、事業部 制と長期経営計画 ◆第2期 GE社とBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)のPPM(プ ロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)等をベースにした、多角化した事業活 動の管理のための戦略−− 70年代 市場成長性と自社のマーケット・シェアーのマトリックス上に各SBU(戦略事 業単位)をポジショニングすることによる、多角的事業活動への経営資源の配分の 合理化 ◆第3期 マイケル・ポーターの競争戦略: 各事業分野における競争にかかわる戦 略−− 80年代 五つの競争要因(競争業者、買い手、売り手、新規参入業者、代替品) 三つの基本戦略(コスト・リーダーシップ、差別化、絞り込み) ◆第4期 Resources(リソース)やCapabilities(ケイパビリティー)ベースの戦 略、コアー・コンピタンス(顧客に自社ならではの価値を提供する、企業の中核的 な力)ベースの戦略、プロセス・ベースの戦略、パートナリング戦略(パートナー シップに基づく連携・提携・統合・合併)−− 90年代 Wal-Mart(大規模小売業), Southwest Airlines (航空会社), Nucor Steel( 製鉄業・ミニミル)、あるいは京阪バレー成長企業(キーエンス、ローム、村田製 作所、三洋化成工業、シマノ、日本電産、任天堂)などの高いパフォーマンス・効 率性・収益性を説明するには、企業環境がもたらす機会や脅威の分析のみでは十分 でなく、会社が保持する独自の強み・弱みにも検討を加える必要がある、との基本 認識に立脚し、水平方向には、選択と集中、連携・提携・統合等による相乗効果・ スケールメリットの追求に、垂直方向にはビジネスプロセスの統合に主眼を置く。 文献 1.石井淳蔵他「経営戦略論 [ 新版 ]」、有斐閣、1996 2.土屋守章「企業と戦略」、リクルート、1984 3.梅沢豊編「特集 パートナリング」『オペレーションズ・リサーチ』Vol. 44, No. 10, 1999. 設問 1.マックとモスの戦略を比較検討しなさい。 2.戦略が重視されるようになった時代的背景について述べなさい。 以上 |
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